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「蘭人所見月輪真圖」
[作者不明]。
[日本、江戸頃]。
月面を描いた江戸時代の希少な掛軸。西洋の船が描かれ、「西洋人(オランダ人)は、望遠鏡で月の黒点を観察すると、山や森や木や人の家であることがわかると主張している」というような説明文が添えられた、空想上の月の図である。題名や本文は、アタナシウス・キルヒャーの『Mundus Subterraneus』(1665年)に入った版画を参考にしたとされる司馬江漢(1747-1818)の銅版画『月輪真形図』(1796年頃)に類似している。しかし、この図はキルヒャーや江漢のものとは異なっており、作者不詳のまま独自に月を観測したか、あるいは芸術的な修飾を施したものと思われる。「加賀藩の海運史」(1997, p. 218)に掲載された月巻の題名・図・本文が本作品と一致するようである。西洋の黒船が登場する江戸時代の月絵は、極めて少ないと思われる。
1幅。少変色・シミ。紙面は39.7 x 26.8 cm。函付き。