US$960.00 | お問合せ | 購入する |
新もん句 ゆかりの月
挿絵画家・作者不詳
慶応4年(1868)頃、版元不詳
瓦版とは、江戸時代、庶民の嗜好のために非合法的に作られた木版刷りのゴシップ紙やニュース紙である。政治的な話題で瓦版を印刷することは、死刑を含む処罰のリスクが特に高かったため、徳川当局の目に留まらないよう、出版物の中に政治的な意味合いを隠す工夫が必要だった。1860年代に徳川が倒れ、その結果政治的混乱が起こると、出版社はより大胆になり、『新訳 ゆかりの月』のような作品はその隙間をすり抜けた。メインタイトルの「ゆかりの月」は地唄の名前である。サブタイトルの「新訳」は、瓦版に印刷された詩が新しい歌詞であることを記している。このパロディ歌詞は、鳥羽伏見の戦い(1868年1月27日〜31日)を題材にしている。社会思想史の専門家であるDr. Morita Kenjiは、この瓦版について次のように記している:
「鳥羽伏見の戦いを題材にした多くの瓦版は、歌や浄瑠璃や歌舞伎を使って戦いを風刺している。左端の体を反らせた女性は、徳川家(旧幕府)を表す「三つ葉葵」で顔を作っている。追い立てている3人は、左から長州、薩摩、土佐の3氏である。右端は尾張藩を表し、尾張大根(宮重大根)を連想させるからである」*。
半紙や半紙絵の「パズル版画」を彷彿とさせるもうひとつの特徴は、徳川家を象徴する人物のかな模様の着物である。合羽摺りの色彩は、この作品が上方で制作されたことを示唆している。周到なタイミングで大胆に制
作された政治風刺作品。
一枚錦絵、完品。軽い褐色。中央に横皺の跡。左マージンにわずかな赤い顔料のにじみ。薄いカードにマウント。25.5 x 36cm。
* K. Morita. 「かわら版」が伝える江戸の大スクープ、ページ、2018年。